石灰石鉱業の紹介 石灰石Q&A
   



■石灰石とは
 石灰岩は、主に方解石(炭酸カルシウム・CaCO3)という鉱物から出来ている岩石です。石灰岩を鉱業的に資源として取り扱う場合は鉱石名として「石灰石」と呼びます。
 日本には全国各地に石灰岩が分布しており、200以上の石灰石鉱山が稼動しています。
日本の石灰石鉱床分布図
日本の石灰石鉱床分布図

 また、有名な石灰岩地形としては秋吉台(山口県)、平尾台(福岡県)などのカルスト地形や猊鼻渓(げいびけい:岩手県)、井倉峡(岡山県)などの渓谷地形が知られています。
     

カルスト地形(山口県秋吉台) 井倉峡(岡山県)
カルスト地形(福岡県平尾台)   井倉峡(岡山県)

 

■石灰岩の形成過程
 
 
 地球の表層はプレートと呼ばれる岩板からなっており、プレート同士が年間数cm程度の速度で相対的に移動しています。海嶺(かいれい)においてマントルから上昇してきたマグマが冷えて固まり、新しい海洋プレートとなり次々に海嶺の両側へ移動していきます。また、海洋底にあるマグマの噴出口(ホットスポット)から上昇してきたマグマが固まり海山が出来ますが、海面上にまで達した海山の頂部にはサンゴ、石灰藻、コケ虫など炭酸塩の殻を持つ様々な生物が複合して礁を形成します。このような生物礁が現在の石灰岩の「もと」になるのです。

石灰岩の形成過程(模式図)

 海洋プレートは年間数cmの速度で移動しているため、その上にある海山と石灰岩も移動して行きます。海洋プレートは海溝に達すると大陸プレートの下に沈み込みますが、このとき、海洋プレート上にある石灰岩をはじめ、海洋底表層の珪質堆積物や海溝充填堆積物(砂や泥)の一部が大陸プレート側に付加されます。このようにして出来た地質体を「付加体」といいます。
 現在日本に存在している石灰岩の多くは、今から3〜2億年前頃に熱帯域で生物礁として堆積し、2億5千〜1億5千万年前頃に沈み込み帯で付加体として大陸側に付加されたものであることが分かっています(当時、日本列島はまだ島弧ではなく、大陸の一部でした)。
 このような形成史から、日本の石灰岩の特徴としては「広い海洋の海山上に堆積したため大陸から土砂の流入が無く、炭酸カルシウムの純度(品位)が高い」という特徴があります。石灰岩は世界中に広く分布している岩石ですが、世界の石灰岩の多くは大陸プレート上の浅い海に堆積したものであり、陸から土砂の流入を受けているため一般的に日本の石灰岩と比較すると品位が低く、また層準ごとの品位変動が大きいことが特徴であると言えます。
 
 

■石灰石の生産
 
 
石灰石は全国で年間約1億7千万トン生産されています。採掘方法としてはほとんどの鉱山で露天採掘でのベンチカット採掘法が採用されています。また、石灰石鉱床の多くは山地に分布しているため、ベンチカットと立坑を組み合わせた方式が一般的です。
 各鉱山は環境の保全に留意すると共に騒音、粉じん、飛石、落石、水質汚濁等の防止に努めています。

代表的な大型石灰石鉱山
代表的な大型石灰石鉱山

 
 

■石灰石の採掘・生産方法 (石灰石鉱山の概要図は こちら
 
 
【1.穿孔・発破】
  ベンチカット採掘法ではまず、穿孔機で採掘ベンチの高さ(5〜15m)に合わせて発破孔(直径10〜20cm程度)を穿孔します。ベンチ高さと穿孔径、孔間距離などの数値(発破規格)は各鉱山の生産規模などに合わせて厳密に決められています。穿孔後、この孔に爆薬を装填して発破が行われます(1回の発破で通常10〜20孔が発破されます)。

発破孔の穿孔作業
発破孔の穿孔作業

 
 
【2.積込・運搬】
 発破により起砕された石灰石は、ホイールローダや油圧ショベルによってダンプトラックに積みこまれ立坑まで運搬されます。積込・運搬に使用される重機類は高能率化のために大型化が進められており、ホイールローダではバケット容量が5〜10m3のものが一般的で(最大は20m3)、ダンプトラックは積載量20t〜100tのものが多く使用されています(最大は218t)。
 
積み込み運搬作業 立坑への投入作業
積み込み運搬作業   立坑への投入作業


 
 
【3.破砕・選鉱】
 立坑に投入された石灰石は、破砕機で10〜20cm程度の大きさに破砕され、ベルトコンベヤで運搬され、ふるい分け設備(スクリーン)によってふるい分けられます。また必要に応じて2次、3次的に破砕、ふるい分けを繰り返し、各種用途に応じたサイズの石灰石製品が生産されます。
 このような破砕・選鉱工程においてはコンピュータによる集中管理が行われており、中央操作室から運転状況と製品生産状況の監視、遠隔操作による機械類のコントロールができるようになっています。

坑内破砕室 中央操作室
坑内破砕室   中央操作室


 
 
【4.出荷・輸送】
 破砕・選鉱設備で生産された石灰石製品はセメント工場や製鉄所、生コン工場、石灰焼成工場など各ユーザーへ出荷されます。輸送方法は地理的条件に合わせてベルトコンベヤ、船舶、トラック、鉄道などが使用されています。

石灰石輸送用ベルトコンベヤ
石灰石輸送用ベルトコンベヤ


 
 

■石灰石の主な用途
 
 
【セメント】
 石灰石の主要な用途はセメント原料です。日本では年間約7,900万トンの石灰石(全出荷量の47%)がセメント向けに出荷されています。セメントは石灰石、粘土、けい石、鉄滓などをキルンで焼成し、石膏を添加し粉砕して製造されます。セメントは様々な建築や土木工事などに広く使われており私たちの生活に無くてはならない基礎資材です。

セメント工場
セメント工場


 
 
【骨 材】
 骨材(こつざい)とはコンクリートやアスファルト、路盤、鉄道用道床などに使われる砕石や砂利の総称です。全国で年間に約6億トンの骨材が生産されていますが、そのうち3割程度が砂利で、6割程度が岩石を破砕して製造した砕石です。国内石灰石出荷量のうち約21%の3千5百万トンがコンクリート用骨材、約5%の760万トンが道路用骨材として使われています。
 石灰石砕石はアルカリ骨材反応の心配がないので、今後の需要増大が期待されています。石灰石骨材の特徴についての詳細は弊協会発行の「石灰石骨材とコンクリート」をぜひご覧下さい。

鉄筋コンクリート高層ビル
鉄筋コンクリート高層ビル


 
 
【鉄 鋼】
 製鉄に石灰石が使用されていることは一般的にはあまり知られていないかもしれません。石灰石は製鉄所の高炉に鉄鉱石やコークスと共に投入され、鉄原料中の不純物と化合してスラグをつくる働きをします(このようなものを造滓剤=フラックスといいます。スラグは高炉で銑鉄から分離・除去されます)。年間約2,200万トンの石灰石(全出荷量の約13%)が製鉄用として使用されています。
 また、高炉からの銑鉄を精錬する製鋼工程においても同様にフラックスとして生石灰が使用されています。

製鉄所(高炉)
製鉄所(高炉)


 
 
【石 灰】
 石灰(せっかい)とは石灰石(化学組成CaCO3)から製造される生石灰(せいせっかい)と消石灰(しょうせっかい)の総称です。生石灰は石灰石を焼成炉で焼成したもので、主成分は酸化カルシウム(化学組成CaO)です。また、消石灰は生石灰に水を反応させた後、分級整粒して出来た白色粉末で、主成分は水酸化カルシウム(化学組成Ca(OH)2)です。すこしややこしいですが、石灰石(Limestone)と石灰(Lime)は違うものです(原料と製品の関係です)。
石灰は製鋼用のほか、様々な化学工業の原料、土木建築、公害防止(排煙脱硫、廃液中和)や農業(肥料、農薬)、食品製造などに広く使われています。
食品に使われる石灰については こちら
石灰について詳細は日本石灰協会のホームページをご覧下さい。

石灰焼成炉 火力発電所の排煙脱硫装置
石灰焼成炉   火力発電所の排煙脱硫装置


 
 
【タンカル】
 石灰石から製造した炭酸カルシウムの微粉末を一般的にタンカルと呼んでいます。タンカルには石灰石を粉砕機で粉砕して製造した普通タンカル、重質(じゅうしつ)タンカルと化学的に合成した軽質(けいしつ)タンカルがあります。

重質タンカル(A)と軽質タンカル(B)
重質タンカル(A)と軽質タンカル(B)

・普通タンカル
一般に3mmから20μm程度の粉状石灰石であり、舗装用、工業用、排脱・中和用、農業用、飼料用等に使用されています。規格としてはJIS-A5008(舗装用石灰石粉)および肥料公定規格があります。

・重質タンカル
白色結晶質石灰石を粉砕して製造した微粉炭酸カルシウムです。粒径はおおむね5μm以下で、特に微粒のものは超微粉タンカルと呼ばれています。用途としては工業用フィラーをはじめ、食品などにも広く使用されています。

・軽質タンカル
石灰石を焼成・水和し、さらに二酸化炭素と反応させることにより化学的に合成した炭酸カルシウムを軽質タンカルといいます。軽質タンカルは反応条件により結晶型(カルサイト型、アラゴナイト型)、粒形(立方形、紡錘形、棒状等)及び粒度をコントロールして均質な製品を製造することができます。高純度かつ均質であることから医薬品や工業用フィラー、食品用に主に使用されます。
食品用石灰石については こちら

※工業用フィラーとは
フィラーとは容積増加や安定性向上、補強などの目的で色々な工業製品に添加される充填材のことを言います。石灰石から製造された重質タンカルや軽質タンカルはフィラーとして優れた特性を持っているため、ゴム、プラスチック、塗料、印刷用インキ、製紙など様々な用途に使用されています。

工業用フィラーとしての利用例 工業用フィラーとしての利用例
工業用フィラーとしての利用例

 

 
 
【ガラス】
 ガラスはシリカ(SiO,2)、ソーダ(Na2O)、酸化カルシウム(CaO)の3成分からなっています。ガラスの主原料となるシリカは融点が非常に高い(1,713℃)ため、製造工程ではNa2Oを添加して融点を下げる必要があります。しかしそのままでは透明性や耐久性に問題があるため、それを改善するため石灰石とドロマイトが添加されます。

ガラス製造工場
ガラス製造工場

参考文献:「石灰石の話」は こちら


 
     
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